地蔵菩薩像  (高さ90cm 伊豆六方石 2018年)

禅寺の慎ましい境内に収まる地元の自然石を探しました。
伊豆六方石は大理石よりも硬く、磨いた部分の黒い光沢と
自然の風合いのコントラストが美しい石材です。


はじめにその石の形に合わせて粘土原型を作りました。
石中から仏様が歩み出でるような高浮き彫りの構図。
参道に顔を傾けて参拝者の願いをすぐ聴こうという姿勢です。
百年後に錫杖を失っても不自然にならぬよう、右手は与願印を表します。

粘土型を石膏型に取り、それを星取り器で一点一点計りながら石を彫っていきます。
これは石の亀裂を予め避けたり、利用したりできる失敗の少ない技法です。

作業中に石の内部から割れ肌が現れました。その自然の色を最後まで残します。
石の個性と、仏像の造形は一期一会
二つの美に感謝しながら調和させた地蔵菩薩像を造りました。

2018年の花祭りに長温寺境内に安置。厳かな奉納供養が営まれました。


 制作過程: 



 石材を決定 2017.1.10 石膏型と石の位置合わせ1/4 原石の粗彫り開始1/6  星取り器で深さの確認2/8
両脇に自然の割れ肌出現2/27 割れ肌の残し加減を思案3/15  衣襞と袖の流れを造形3/28  蓮華座の制作3/30
焼き銀箔を押した古色錫杖4/3  表情の仕上げ4/4  石彫に磨きをかけて完成4/5  開眼供養 4/8



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